リハビリテーション



 脱会する時に、どれほど難しくて苦しいことがあるか、あなたは一番わかっています。あなたは、元メンバーということで一般社会からマイナスのイメージをもたれたり、社会復帰できるだろうかという不安で自信を持てないなど、いろいろと辛い経験をすると思います。

 どんな人でも、成功もするでしょうが、失敗もするのです。人生の中で多くの困難に遭遇した時、誰もがあなたと同じ経験をします。あなただけが特別なのではありません。それをぜひ理解して下さい。

 私は13才から柔道の道を選びました。柔道を学ぶ時にまず、受け身を覚えなければなりません。この受け身がどれほどできるかどうかにより、柔道の上達の可能性がかかっています。

 人間も同じです。私たち人間は、失敗した時にどれほど立ち上がることができるかどうかが大切なのです。失敗を通して、人間は成長することができます。

 あなたは今、そういうことを学んでいます。もちろん簡単な出来事ではありません。あなたはやめる時、苦しい状況の中にあっても、決して事実から逃げたさなかったはずです。あなたのために、自分自身から逃げ出さないで下さい。あなたのまわりに、あなたの心を受け止めてくれる人が必ずいます。

 ある元メンバーは脱会してからリハビリテーションのためにいくら難しくても決してあきらめないことが大切だと言っています。人生の道のりに素晴らしい景色が沢山あります。あなたは脱会して、自由になったのだから、一つ一つ景色を楽しみ、そこから学んでほしいと思います。そして、自由と同時にあなたの責任において、あなたの行為を釈明しなければなりません。自分の可能性と能力を探しあてて、あなたらしい生き行き方をするのです。自分を信じ、自分の友達になってほしいと思います。

 決心がついたら、学校、大学、仕事などに戻るようにするといいでしょう。あなたはある時、決意しなければなりません。そのために半年、1年、あるいはもっと時間がかかっても問題ではありません。『どんな長い旅も最初の一歩からはじまる。』という中国のことわざがあります。そのことわざは元メンバーのリハビリテーションによくあてはまると思います。リハビリテーションはどんなに長くても、問題ではありません。大切なのは『最初の一歩からはじまる。』ということです。まず、簡単なことからはじめるしかないでしょう。立ち止まり、呆然として泣き明かす日々が過ぎたら、ゆっくりとはじめましょう。そうして少しづつ、新たな人生を作っていったらどうでしょうか。

 カルトの元メンバーは、自分に対してマイナスのイメージを持ちますが、これは大きな間違いです。自分がユニークな存在で、人間として価値があることを理解して下さい。あなたは普通に社会復帰することができるし、将来もあります。

元メンバーのために2

 

 多くの元メンバーから、『組織をやめるのは簡単ですが、友達やそのグループの考え方から離れるのは、辛いのです。』とよく聞かされます。

 1986年、4人のアメリカ人の専門家、コンワエ氏、シゲリマン氏、カルミカエル氏、コッギン氏は48種類のカルトの353人の元メンバーに脱会後、抑うつ状態に陥り、68%は孤独を感じ、59%は強い罪の意識を感じました。そして、48%は悪い夢にうなされ、31%はあまり眠れない状態になり、25%は部分的な記憶を失い、15%は幻覚を見る経験をしました。その後、いろいろな所でこのような調査を行いましたが、似たような結果を得ました。

 マインド・コントロールを受けたことによる精神的な問題以外に、さまざまな問題が元メンバーに起こっていました。それは、あるカルトの中では、特に子供と女性は強姦、性虐待、暴力などを受けていたケースも少なくないのです。その場合、彼らのリハビリテーションはとても難しくなります。
 また、多くの元メンバーは自分のカルトから脱会するときには経済的に苦しい立場に立たされています。それはほとんどの人は献身するときに自分の財産を全部、そのカルトに渡してしまい、脱会するときには無一文になっているのです。そのことは彼らにとって大きなストレスとなっています。



 1:仕事を探す
 2:人間関係
 3:孤独
 4:抑うつ状態、深いむなしさ
 5:オカルトが与えるもの
 6:カルトからのいやがらせ
 7:脱会後、メンバーはカルトについて思い出す


 
脱会後元メンバーの良いリハビリテーションのために、家族、周囲の人達の理解は非常に大切です。リハビリテーションの時のカウンセラーのアドバイス、そしてすでに社会復帰した元メンバーとの交わりも必要です。
 そのために忍耐は必要です。リハビリテーションのために時間のかかるのを本人も周囲の人も理解しなければなりません。家族は温かい心で本人を支えなければなりません。本人は脱会後、みんな自分が悪いと思い強い罪の意識を感じています。家族や周囲の人は本人よりも、カルトや指導者が悪いのだと説明することが大切です。とにかく、家族は本人を許していることを伝えなければなりません。そして、本人を責めたり、カルトにいた過去のことを話す必要はありません。
 そしてもう一つの大事な点は、家族も自分たち自身を責める必要がないことです。多くの両親は自分たちが悪かったと思います。もちろん、いろいろな家族の中に問題はあるでしょう、けれどもその混乱をつかって本人を操作したカルトこそ一番悪いのです。大切なのは、子供と新たに家族の出発をすることです。前よりも、いい家族になるのを目指すことです。それぞれの人によって、リハビリテーションの期間は違いますから、その人のペースを守りながら、本人が選ぶ新しい人生の道を尊重してあげて欲しいと思います。

 

1:仕事を探す

 

先に説明したように、多くの場合、メンバーは脱会するときには一文無しになっています。ほとんどのメンバーたちは仕事を辞めて献身します。ですから、脱会後、新たに仕事を探すことになるのです。しかし、仕事を見つけることは難しく、ある元メンバーは何十回という面接を受け、断られていました。失業者にとってこの経験は辛いことですが、元メンバーのように自分の自立とアイデンティティーを失う経験をしたものにとっては面接に何度も落ちるということは残念ながら、予想される出来事です。だから、就職を探すときには焦らずに、十分時間をかけることは大切です。そして、自分の就職のために周りの多くの人達と積極的にかかわりをもたなければなりません。

 

2:人間関係
個人の自立を失うときに多くの場合は批判的態度も失うことがあります。彼らはカルトの中で批判的態度を禁じられていて、従う形でのみ考え、行動していたので、脱会後は彼らは自分自身で考え、判断することをしなければなりません。彼らがカルトの中にいた時の判断は間違っていたと理解するのは大切です。しかし、どんな人間でも、間違いをすることがあるということを理解するのはさらに大切なのです。そう考える中で、彼らは再び自分自身を尊重することができます。
 元メンバーが自分の自立やアイデンティティーを連れ戻そうとするときには、一時的に人間関係が悪くなる可能性が十分あります。それは、彼らが信じていたものに裏切られ、だまされた経験に深く傷ついて、再び、人を信じ、あるいは従うことに抵抗を感じているからです。彼らは人を信じたり、何かに従うということで、自分の考えや批判的な判断などを捨てる必要がないということを理解するのに時間がかかります。大切なことは、人を信じることが問題なのではなく、盲目的に信じるのは危険だということです。批判的な精神を失わず人や物事を信じる態度は大切です。

3:孤独

 

元メンバーにとって脱会後の孤独はもう一つの大きな問題です。彼らはカルトの社会に生きていたので、考え方、人間関係など、すべてカルトや指導者によって、成り立っていました。カルトの中に、いい友達をもっていたのです。脱会して、彼らはこれらの人間関係をすべて無くしてしまいます。この時に、自分の精神的な支えも、なくなりますから、非常に苦しい立場になります。
 彼らはもう一度、ゼロから自分の人生をはじめなければなりません。新しい、友達をつくらなければならないし、あるいは昔の友達ともう一度連絡を取らなければなりません。しかし、彼らはカルトの中にいたとき、ほとんどの人間関係が上司の指示によって成り立っていたので、自分で物事を考えて、決断していくのは、最初はあまりできません。普通に人と付き合うのも難しいことなのです。だから、家族や周囲の人々は彼らが苦しみながら、新しい生活をしていくのに時間がかかることを理解しなければなりません。

 

 4:抑うつ状態、深いむなしさ

元メンバーは精神的、霊的な支えを失うような孤独な経験の中で抑うつ状態に陥り、深い空しさを感じることがあります。さらにほとんどの場合、強い罪の意識を感じています。メンバーだった時、多くの人を献身に導いたとか、マインド・コントロールをしていたとか、組織の活動の中で多くの人を騙してしまったからです。彼らがこの状態にいるときには家族や周囲の人々は本人だけがこの問題の中で、すべてに責任があるのではなく、組織の指導者や上司はさらに責任があるのを理解させる必要があります。そして、彼らが自分の責任を知るためにはマインド・コントロールされたいたことを理解しなければなりません。
5:オカルトが与えるもの

 

いろいろなカルトはオカルト的なテクニックを使っています。それは、サタン、悪霊、あるいは悪い影響から自分を守るためとしてメンバーたちに教えられています。例えば、長い時間、マントラやあるいは理解できない言葉で祈らされたり、長い時間、歌を歌います。あるカルトのメンバーたちは深いトランス状態になります。脱会した後も、特に自然脱会の元メンバーにはこの教えられたテクニックが長い時間、影響として残ります。
多くのカルトはメンバーが脱会すれば、霊界からのろいが出てきて、家族が病気になったり、事故にあったりし、殺されると教えています。元メンバーは脱会しても、このことをまだ信じている場合が多いので、強い恐怖感を持っています。このストレスのため幻覚を見る人もいます。そのために、この恐怖心から、無意識にカルトで学んだテクニックを使ってしまいます。
 元メンバーはこの現象から、抜けるために時間がかかります。この問題がカルトのオカルトによるテクニックやマインド・コントロールから現れてくる現象だと理解することによって精神的にバランスをたもてます。また、宗教によってこの問題を解決する人もいます。家族や周囲の人々は彼らがこの悩みについて話をするのを忍耐を持って聞かなければなりません。


6:カルトからのいやがらせ
カルトは脱会したメンバーがカルトの問題や犯罪について話しをしないように(特にマスコミに)不安を与えたり、嫌がらせをします。そのカルトによって、方法は違います。手紙を送ったり、電話をかけてきます。裁判を起こすカルトもあります。あるカルトは暴力行為をしたり、誘拐や殺人までします。
しかし、多くの場合、カルトは脱会した人を連れ戻すために働きかけます。そして、そのメンバーの決心が変わらない場合や組織のために何も役に立たない時はその人をそのままにしておきます。

 

7:脱会後、メンバーはカルトについて思い出す
元メンバーは偶然、カルトの中にいたときよく知っていたメンバーに出会うと、非常に難しい経験をします。多くの元メンバーは、その時にとても欲求不満を感じたとわたしに説明しました。彼らは、カルトをやめた理由を相手に話したかったし、それによって相手に目覚めて欲しかったのです。しかし、相手は全く聞く耳を持ちません。彼らにとって脱会したメンバーは悪魔のような存在になっているからです。
 元メンバーにとってこのような出会いは良い面と悪い面があります。それによってカルトにいた時のいろいろな出来事を思い出します。もしその元メンバーがしっかり回復しているならば、ほとんど影響ありません。しかし、まだ回復していない場合、特に自然脱会した人にとっては、とても悪い影響を受ける可能性があります。その時の経験によっては本人が、カルトあるいは指導者が正しいともう一度思い、カルトに戻るケースがあるからです。
 あるメンバーは、新聞やテレビに出た指導者の写真、カルトについてのレポートを見たときにカルトについていろいろなことを思いだし、戻ったケースもあります。多くのカルトは一般によく知られている歌やメロディーを組織の中で使います。ある元メンバーは偶然にラジオでその歌やメロディーを聞き、懐かしさから、カルトに戻ったケースもあります。もちろん、先に、説明したように元メンバーが回復していればいるほどこのような問題はなくなります。

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